相手を変える前に、自分の「反応」を変えてみる
人との関係が苦しくなったとき、私たちはつい、相手に変わってほしいと思います。
もう少し優しく話してほしい。
こちらの気持ちをわかってほしい。
自分のことは自分でやってほしい。
同じことを何度も繰り返さないでほしい。
そう思うのは、当然のことだと思うんです。
実際、相手の言動によって困っているのですから、「相手が変われば、この問題は解決する」と考えるのも無理はありません。
けれど、相手を変えようとすればするほど、なぜか同じやり取りが繰り返されてしまうことがあります。
相手が困っている様子を見れば、こちらが慌てて助ける。
相手が不機嫌になれば、機嫌を直そうとする。
相手が何も決めなければ、代わりに決める。
相手が不安を訴えれば、安心させる答えを探す。
その場では問題が収まったように見えるかもしれません。
けれど、しばらくすると、また同じことが起きます。
なぜなら、相手の行動だけではなく、それに対するこちらの反応まで含めて、ひとつの関係の形ができあがっているからです。
たとえば、相手が困った顔をすると、こちらがすぐに助ける。
この流れが何度も繰り返されると、相手にとっては「困った様子を見せれば、誰かが何とかしてくれる」という経験になります。
そしてこちらも、「私が何とかしなければ、この人はもっと困る」と感じるようになります。
こうして、どちらか一方だけが悪いわけではないのに、二人の間に決まった役割が作られていきます。
相手が問題を起こす人。
こちらが問題を解決する人。
相手が不安になる人。
こちらが安心させる人。
相手が動かない人。
こちらが代わりに動く人。
この関係を変えたいと思ったとき、「もう助けない」「何もしてあげない」と、いきなり大きな行動に出ようとすると、かえって苦しくなることがあります。
長い間やってきたことを急にやめるのは、簡単ではないからです。
罪悪感が出てくることもあります。
見捨てたような気持ちになることもあります。
相手が怒ったり、さらに不安定になったりすることもあるかもしれません。
だから最初は、大きな決断をするよりも、ほんの少しだけ「反応を変えてみる」というところから始めてもいいと思うんです。
すぐに答えを出さない。
すぐに解決しようとしない。
すぐに機嫌を直そうとしない。
すぐに代わりに動かない。
何もしないというより、「自動的にやっていたことを、いったん止めてみる」という感じです。
相手が「どうしたらいいと思う?」と聞いてきたとき、すぐに答えを出すのではなく、
「あなたはどうしたいと思っているの?」
と返してみる。
相手が不機嫌になったとき、慌ててご機嫌を取るのではなく、
「今は機嫌が悪いんだな」
と、そのまま見ておく。
相手が困っていると訴えてきたときも、すぐに手を出すのではなく、
「何か手伝ってほしいことがあるなら、具体的に言ってね」
と伝えて、相手が自分で考える余白を残しておく。
これは、相手を突き放すことではありません。
冷たくなることでも、愛情をなくすことでもありません。
相手の問題を、相手に返していくことです。
そして、自分の責任ではないものまで、自分が背負わないようにしていくことです。
私たちは、誰かを大切に思うほど、その人が困っている姿を見るのが苦しくなります。
本当は相手を助けたいというよりも、相手が苦しんでいるのを見ている自分のつらさを、早く何とかしたくなることもあります。
だから、つい先回りしてしまうんです。
答えを出したり、なだめたり、代わりに行動したりして、その場を収めようとします。
けれど、いつもこちらが先に動いてしまうと、相手が自分で考えたり、選んだり、失敗したりする機会まで奪ってしまうことがあります。
助けているつもりが、長い目で見ると、相手が自分の力を使う場面を減らしていることもあるんです。
反応を変えると、最初は関係が悪くなったように感じるかもしれません。
これまで通りに動いてもらえなくなった相手が、怒ったり、不満を言ったりすることもあります。
でも、それは必ずしも間違った方向に進んでいるということではありません。
これまでの関係の形が変わり始めたからこそ、戸惑いが起きている可能性もあります。
大切なのは、相手を思い通りに動かすために反応を変えるのではない、ということです。
「私がこうすれば、相手も変わるはず」と期待していると、相手が変わらなかったときに、また苦しくなります。
反応を変えるのは、相手を変えるためではありません。
自分がこれ以上、同じ役割を背負い続けないためです。
自分の心や時間や生活を、相手の機嫌や行動に振り回されないようにするためです。
そして相手にも、自分の人生を自分で引き受ける余地を返していくためです。
人間関係を変えるというと、何か大きな決断や、強い言葉が必要なように感じます。
けれど実際には、
今まで即座に反応していたところで、少し立ち止まる。
そこから関係が変わり始めることもあります。
何かを言う前に、少し待つ。
助ける前に、本当に頼まれているのかを考える。
相手の不機嫌を、自分の責任にしない。
答えを出す代わりに、相手に問い返してみる。
その小さな変化は、すぐには目に見えないかもしれません。
それでも、自分が自動的に背負ってきた役割から少しずつ降りていくことはできます。
相手を変えることは難しくても、自分がどう反応するかは、少しずつ選び直すことができます。
まずはひとつだけ、
「いつもの反応を、今日は少しだけ変えてみる」
それくらいのところから始めてもいいのではないかなと思うんです。
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