引きこもること…
例えば腕の骨を折ったとしましょう。
病院へ行けばレントゲン写真を撮り、お医者さんが画像を見ながら、
「ここが折れていますね」
と指摘してくれます。
そして、
「では固定しましょう」
という治療方針が決まる。
とても分かりやすい世界です。
原因と結果が比較的はっきりしていて、目に見える証拠もあります。
だから私たちは安心できるのです。
ところが、人間の心の世界に足を踏み入れた瞬間、その頼りになるレントゲン写真は消えてしまいます。
目には見えない感情。
複雑に絡み合う人間関係。
幼少期から積み重なった体験。
無意識の思い込み。
そして本人ですら気づいていない恐れや罪悪感。
そうしたものが何層にも重なり合っているため、「なぜその人がその行動を取るのか」という問いに対して、単純な答えを見つけることはできません。
特に引きこもりという現象を理解しようとすると、この複雑さに圧倒されます。
引きこもりは防衛戦略である
世の中には、
「怠けているだけだ」
「甘えているだけだ」
という見方もあります。
けれど実際に多くのケースを見ていると、そんな単純な話ではないことが見えてきます。
むしろ引きこもりは、その人が生き延びるために選び取った、非常に精巧な防衛戦略として理解した方が自然な場合が少なくありません。
外の世界に出ることが危険に感じる。
失敗することが恐ろしい。
人から評価されることに耐えられない。
期待に応えられない自分を見せたくない。
そうした心の痛みから自分を守るために、部屋という安全地帯に身を置く。
それは本人なりの合理的な選択でもあるのです。
もちろん、その状態が苦しみを生み出していることも事実です。
しかし私たちが理解しなければならないのは、
「なぜ出られないのか」
ではなく、
「なぜ出ない方が安全だと感じているのか」
という視点なのかもしれません。
私たちもまた防衛戦略を持っている
私たちは誰もが、何らかの防衛戦略を持っています。
言いたいことを飲み込む。
怒りを感じないふりをする。
相手をコントロールしようとする。
必要以上に頑張る。
誰かの期待に応え続ける。
そうした行動の裏にも、私たちなりの恐れや罪悪感が隠れています。
だから引きこもりというテーマを深く見つめることは、人間の防衛本能そのものを理解することにつながるのです。
そしてそこには、私たちの人間関係を大きく変えるヒントが眠っています。
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