『心配』という名の『口止め』
子どもが「しんどい」と言ってきた時に、ものすごく心配してしまう事ってありますよね?親として。
振り返ってみて、私は…そこまでではない症状の時も、仕事を休んでまでそばにいたり、薬を買いに走ったり、いつもより過剰に気を使ったり。
一見すると、とても愛情深いお母さんに見えるんです。
でも、少し立場を変えて考えてみたいんですね。
子どもの側から、その光景はどう見えていたのでしょうか。
「私がしんどいって言ったから、お母さんが仕事を休んでしまった」
「私のせいで、お母さんがこんなに大変になっている」
「次からは、もう言わないでおこう」
そんなふうに、子どもの中に小さな結論が積み上がっていくことが、あると思うんです。
これって、表面上は愛情なんですよね。
お母さんは、心から心配している。子どものことを大切に思っている。
だからこそ、子どもも「これは愛情なんだ」と受け取る。
でも、その愛情が大きすぎると(この表現で良いのかはわからないけど)子どもはその過剰だと思える反応を断れなくなるんです。
そして、自分のしんどさのほうを、引っ込めてしまう。
愛情の形をした口止め。
こう書くと、少し怖い感じもするんですけど、でも実際にあることなんじゃないかなと思うんです。
そして、もしかしたら私自身も、無自覚にこう感じていたのかもしれません。
「子どものしんどさを、これ以上見たくない」
「自分の中の不安が、これ以上大きくなるのが怖い」
「だから、このしんどさが消えるように、全力で何かをしなきゃ」
子どもを救おうとしているように見えて、実はお母さん(私)自身の不安を鎮めようとしていた。
そういうことも、あるんじゃないかと思うんです。
もちろんこれは、お母さん(この場合は私)が悪いというお話をしたいんじゃないんです。
これを、一般論にしてお話しを続けますけど…お母さん自身もきっと、子どもの頃に、自分のしんどさをそのまま受け取ってもらった経験が少なかったのかもしれないんですよね。(私がそうでした)
だから、子どもが「しんどい」と言った時に、どう受け止めればいいのかが分からない。
ただそばにいる、ただ聞く、ただ「そうなんだね」と受け取る。
そのやり方を知らないから、過剰に動くことでしか、しんどさに反応できなかったのかもしれません。
愛されていたのに、しんどいと言えない
カウンセリングをしていると、こういう方によくお会いします。
「母は、いつも私のことを心配してくれました」
「愛されていなかったわけではないと思います」
「でも、なぜか自分のしんどさを言葉にするのが苦手なんです」
そう話される方の中に、子どもの頃の“親にさえ気を使う癖”が、今も残っていることがあるんですよね。
愛されていなかったわけじゃない。
むしろ、たっぷり心配されていた。
でも、その愛情の中に、ほんの少しだけ、
「これ以上、しんどさを見せないでね」
という無言のメッセージが混ざっていたのかもしれない…
子どもは、そういう空気をとても敏感に受け取ります。
そして、大人になってからも、しんどい時に「しんどい」と言えない人になっていくことがあるんです。
本当に必要だったもの
では、どうしたらよかったのでしょうね。
私は、とてもシンプルなことだったんじゃないかなと思うんです。
「しんどいんだね」
ただ、それを受け取る。
何かをしてあげようとしなくてもいい。
すぐに解決しようとしなくてもいい。
仕事を休まなくても、薬を買いに走らなくても、過剰に心配しなくてもいい。
子どもが「しんどい」と言った時に必要なのは、そのしんどさをそのまま受け取ってもらう経験なんですよね。
「しんどいんだね」
「そっかぁ、しんどいんだ」
それだけで、子どもは学びます。
自分のしんどさは、ここにあっていいんだ。
誰かを困らせるものではなく、隠さなければいけないものでもなく、ちゃんと存在していいものなんだ。
そう感じられた子どもは、大人になってからも、自分の感覚を信頼しやすくなるんじゃないかなと思うんです。
飲み込んできたしんどさに気づく
もし今、これを読んでくださっている方の中に、
「私の母も、心配しすぎる人だったかもしれない」
「私はいつも、自分のしんどさを飲み込んでいたかもしれない」
そう感じる方がいらっしゃったら、まずはその飲み込んできたしんどさを、自分で認めてあげてほしいなと思うんです。
「私、しんどかったんだ」
「ずっと我慢してきたんだ」
その一言を、自分に向けてあげるところから、何かが少しずつほどけていくことがあると思うんですよね。
心配されていたことと、しんどさを言えなかったこと。
その両方が、同時に存在していてもいいんだと思います。
愛されていたから傷つかなかった、ということではないんです。
愛されていたけれど、言えなかったことがある。
心配されていたけれど、受け取ってもらえなかった感覚がある。
そこに気づけた時、ようやく自分のしんどさを、自分のものとして取り戻していけるのかもしれません。
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