友達がいない…
― 箱庭で見る心の構図 ―
人付き合いがしんどいなぁ、と思う時って、ありませんか? 人との関係性で悩んでいる、というご相談を、私はたくさんお聞きします。「コミュニティに入っても馴染めない」
「親しい人ができても、なぜか続かない」
「楽しかったはずの時間のあとに、ぐったり疲れてしまう」
そういう種類のお話です。
たとえば、誰かと会って楽しい時間を過ごした帰り道。
電車に揺られているうちに、だんだん何かがざわざわしてくる。
「あの時、私、変なこと言わなかったかな」
「相手の表情、ちょっと曇ったように見えたけど、気のせいかな」
「気を使わせてしまっていなかったかな」
職場の人間関係、昔からの友人、習い事の仲間…他にも、話せる対象がそれなりにある。
挨拶もできるし、雑談もできる。
「外でもっと深く繋がれる場所が欲しい」
「もっと本音で話せるコミュニティが欲しい」
そんな気持ちで、いろんな場所を探しに行く。
そして、行った先で、また同じことを繰り返してしまう。
「気の合う友達が欲しい」というレベルじゃない。
「大親友」と言われたら、まだわかる。
でも、それよりさらに深い、もっと根っこのところで分かり合える相手…
そういう濃密さを求めていらっしゃる。
木の箱の中に砂を敷いて、その上に小さな人形や建物を置いていくんです。
好きなように、思いつくままに。
そうして出来上がったものを見ていくと、
その人がどんなふうに人と関わっているのか、
どこに距離を感じているのか、
どこに安心しているのか。
箱の中で、誰がどこを見ているのか
その方の話を聞いているうちに、私の中で、ある構図がふっと浮かんできました。 言葉で説明するより、そのまま箱庭にしてしまった方が、ずっとわかりやすいなと思うような構図でした。 今回はドールハウスのようなものを頭に浮かべました。 まず、舞台はこの部屋です。木目のあたたかいリビング。
窓があって、ソファがあって、観葉植物があって、『家族』がいるスペースとしては申し分ないって思います。
シンプルに、登場人物は三人とします。
配置は、こうなります。
でも…パートナーと子どもは、女性の方を見ていないんです。
二人とも、それぞれ別の窓の外を見ている。
窓の外とは、自分が家の外に持っている『自分なりの楽しみ』の事だと思ってくださいね。![]()
この時、女性の視界には、"背中"が並びます。
話しかけても、同じ方向を向いてもらえない感覚。
でも、そうはならないんです。
女性が本当に欲しいものは、外の世界にはなくて、"この部屋の中"にあるからです。
この構図だからこそ、起きていること
ここからが、すごく大事なところで。 この箱庭の中で、ずっと家族の背中を見ている女性は、家の中で得られなかった"同じ方向を向く体験"を、無意識に外で探し始めるんです。だって家の中は、可もなく不可もなく…
不満を言うにしては幸せで。
幸せというには…やっぱり不満…
友達との関係。
コミュニティ。
学びの場。
サークル。
SNS。
「ここでなら、本当の私を分かってもらえるかもしれない」
「ここでなら、深く繋がれるかもしれない」
友達には、友達の領分がある。
コミュニティには、コミュニティの距離感がある。
誰かと会って楽しい時間を過ごしたはずなのに、家に帰って一人になった瞬間、
「あの時、私、変なこと言わなかったかな」
「気を使わせてしまったかな」
と検証が始まる。
「これじゃない」という違和感の正体
そして、面白いのが、ご本人もどこかで気づいているんです。 どんなに仲のいい関係ができても、「これじゃない」って思ってしまう瞬間がある。頭では「すごくいい人に出会えた」「ここなら馴染めるかも」と思っているのに、
心の奥で「いや、違う」という声がする。
これね、わがままなわけじゃないんですよ。
むしろ逆で、すごく正直な反応なんです。
「これじゃない」という違和感は、自分を責める材料じゃなくて、心からのお知らせなんじゃないかな、と思うんです。本当はどこを見ればいいか、自分はもうわかっている。ただ、見るのが怖くて、まだ動けないだけで。そして本人は、それを「私はどこに行っても繋がれない人間なんだ」っていう、自分の欠陥のように受け取ってしまう。 本当は、ボタンの掛け違いで、最初から探す場所が違っただけなのに。
じゃあ、犬や猫を飼えばいいのか?
そういう話をしている時に「じゃあ、犬や猫を飼ったらどうか? って話しも上がるんです」と教えてくれました。 私も犬や猫を飼った経験もあるので「しっぽを振って懐いてくれて、体温があって、絶対に裏切らない存在ですよ」と賛成します。 すると、結構な割合で、首を振られるんです。「怖くて飼えない」と。
「一生面倒見なきゃいけないと思うと、関わる覚悟が持てない」と。
それを家の中に置いてしまったら…
その方の中で、本当に向き合わなきゃいけないことから、目を逸らすことになってしまう。
ご家族とのこと。
パートナーとのこと。
自分が本当に欲しい繋がりのこと。
ご本人は意識してそう言ったわけじゃないけれど、心の奥は、ちゃんと知っている。
「これ以上の温度を入れたら、私は本当の問題から逃げてしまう」って。
だから、犬や猫は飼えない。
そこで、ちょうど良い温度感を置いてみる
そういう話の流れで、ふっと出てきた言葉があったんです。 「でも、亀を飼っているんです。すごく懐くわけじゃ無いけど、顔を見たら寄ってくる。可愛いから、家族で可愛がってるんです。」って。 箱庭の中に、もうひとつ、小さな存在を置いてみます。 すると、面白いことが起きるんです。パートナーも子どもも、ふとした時に、亀の方を向く。
「亀、今日餌食べた?」
「動いてるな」って、たまに話題にしてくれる。
その瞬間だけ、女性のいる方向に、家族の視線が戻ってくる。
一瞬だけ、同じものを見る時間ができる。
これが、"つながった感じ"になるんです。
でも、それは長くは続かないんですよね。
亀の話題はそんなに長くは続かなくて、家族はまたすぐ、それぞれの窓の外を見る。
亀自身も、こちらに寄ってくることはあるんです。
のっそり、のっそりと、足元まで歩いてくる。
でも、しっぽを振って甘えてくるわけじゃない。
膝の上に乗ってきて温めてくれるわけじゃない。
女性が欲しい「寄ってき方」ではない。
これは、すごい知恵なんです
「程よい距離、程よい関係」その象徴のような存在なんです。
箱庭を組み立て終わって、上から眺めてみると、その方が今いる場所が、はっきり見えてきます。
家族はそれぞれ別の窓を向いている。
女性は真ん中で、その背中を見ている。足元には、亀が一匹。
だから、温度を上げすぎない。
だから、外でも深入りしすぎない。
人形を、そっと動かしてみる
箱庭を眺めているうちに、私はひとつ、お伝えしたいことが浮かんできました。 「ご家族に『私の方を見て』と願い続けるんじゃなくて、彼らが見ている景色のほうに、こちらから興味を持ってみるのは、どうでしょう」簡単な話じゃないんです。
だって本当は、自分の方を向いてほしかったんだから。
部屋の真ん中から、ご家族の隣へ。
すると、不思議なことに、ご家族の背中が、ほんの少し近く感じられるようになる。


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