友達がいない…

― 箱庭で見る心の構図 ―

人付き合いがしんどいなぁ、と思う時って、ありませんか? 人との関係性で悩んでいる、というご相談を、私はたくさんお聞きします。

「コミュニティに入っても馴染めない」
「親しい人ができても、なぜか続かない」
「楽しかったはずの時間のあとに、ぐったり疲れてしまう」
そういう種類のお話です。

そして、正直に言うと、私自身も「人付き合いが上手いですか?」と聞かれたら、まったくそんなことはなくて、むしろ、ずっと不器用にやってきた方なんです。 でも、だからこそ、人との距離感のお話を、ちゃんと聞かせていただけるんじゃないかな、と思っているくらいです。
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今日お話するのは、そんなご相談の中から、印象に残っているいくつかのケースを、ご本人たちのご了承をいただいたうえで、少し混ぜて書かせてもらっているお話です。 特定の誰かというより、「あるある」のような心の風景として、読んでくださいね。
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たとえば、誰かと会って楽しい時間を過ごした帰り道。
電車に揺られているうちに、だんだん何かがざわざわしてくる。
「あの時、私、変なこと言わなかったかな」
「相手の表情、ちょっと曇ったように見えたけど、気のせいかな」
「気を使わせてしまっていなかったかな」

家に着く頃には、楽しかったはずの一日が、いつの間にか「どう思われたんだろう」という不安に塗り替えられている。 こういう感覚、わかる方もいらっしゃるんじゃないかな…と思います。
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こういう方たちって、繋がりが何もないわけじゃない人が多いんです。

職場の人間関係、昔からの友人、習い事の仲間…他にも、話せる対象がそれなりにある。
挨拶もできるし、雑談もできる。

それでも、満たされない感じがあるんですよね…。

「外でもっと深く繋がれる場所が欲しい」
「もっと本音で話せるコミュニティが欲しい」

そんな気持ちで、いろんな場所を探しに行く。
そして、行った先で、また同じことを繰り返してしまう。

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ご相談の入口は、いつもそういう形をしているんです。 ただね、お話を聞かせてもらっているうちに、あることに気づくことが多いんですよ。 その方が求めている繋がりの濃さって、一般的に言う"友達"という範囲を、明らかに飛び越えているんです。

「気の合う友達が欲しい」というレベルじゃない。
「大親友」と言われたら、まだわかる。
でも、それよりさらに深い、もっと根っこのところで分かり合える相手…
そういう濃密さを求めていらっしゃる。

普通の友人関係に求めるには、明らかに重すぎる重さなんです。 「友達と深く繋がれない」という形のお悩みなんですけれど、よく聞いていくと、求めているのは"友達"の領分じゃないことが多くて… もっと別の場所で満たすべきものを、友達のところで叶えようとしている…そんな構図が、だんだん見えてくるんです。 じゃあその"別の場所"って、どこなんだろう… それを見るために、私、よくお話を聞きながら、頭の中で勝手に箱庭を組み立てるクセがあるんです。 箱庭って聞いたことはありますか?

木の箱の中に砂を敷いて、その上に小さな人形や建物を置いていくんです。
好きなように、思いつくままに。

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そうして出来上がったものを見ていくと、
その人がどんなふうに人と関わっているのか、
どこに距離を感じているのか、
どこに安心しているのか。

そういう"心の中の関係性"が、ひとつの景色として見えてくることがあるんです。 実際に、箱庭があるわけじゃないけど、私の頭の中で、クライアントさんの心の風景を配置していきます。

箱の中で、誰がどこを見ているのか

その方の話を聞いているうちに、私の中で、ある構図がふっと浮かんできました。 言葉で説明するより、そのまま箱庭にしてしまった方が、ずっとわかりやすいなと思うような構図でした。 今回はドールハウスのようなものを頭に浮かべました。 まず、舞台はこの部屋です。
ドールハウス

木目のあたたかいリビング。
窓があって、ソファがあって、観葉植物があって、『家族』がいるスペースとしては申し分ないって思います。

お話を伺いながら、ここに登場人物たちを置きます。

女性主人公の女性
パートナーパートナー
子ども子ども

シンプルに、登場人物は三人とします。
配置は、こうなります。

女性は、部屋の内側で、二人の方を見ている。

でも…パートナーと子どもは、女性の方を見ていないんです。
二人とも、それぞれ別の窓の外を見ている。

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窓の外とは、自分が家の外に持っている『自分なりの楽しみ』の事だと思ってくださいね。

この時、女性の視界には、"背中"が並びます。
話しかけても、同じ方向を向いてもらえない感覚。

そこにあるのは、「つながっていない感じ」なんですね。 じゃあ、女性も外を見に行けばいいのに、と思うかもしれない。

でも、そうはならないんです。
女性が本当に欲しいものは、外の世界にはなくて、"この部屋の中"にあるからです。

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この構図だからこそ、起きていること

ここからが、すごく大事なところで。 この箱庭の中で、ずっと家族の背中を見ている女性は、家の中で得られなかった"同じ方向を向く体験"を、無意識に外で探し始めるんです。

だって家の中は、可もなく不可もなく…
不満を言うにしては幸せで。
幸せというには…やっぱり不満…

友達との関係。
コミュニティ。
学びの場。
サークル。
SNS。

「ここでなら、本当の私を分かってもらえるかもしれない」
「ここでなら、深く繋がれるかもしれない」

そんな期待を持って、外に出ていく。 でもね、これって、無理なゲームになっちゃうんですよ。 だって、本当に欲しかった「同じ方向を向いてくれる体験」って、本来は親や家族との間で満たされるはずのものだったから。 それを友達やコミュニティに代わりに担ってもらおうとしても、相手の方は「そんな深さまで求められても困る」となってしまうんです。 いるにはいますよ、がっつり向き合ってくれる友人。 だけど、たぶんですけど、そういう人に対しては「なんかウザい」って思ってしまうかもしれません。

友達には、友達の領分がある。
コミュニティには、コミュニティの距離感がある。

そこに、家族レベルの深さを持ち込もうとすると、必ずどこかで歪みが出ると思うのです。 そして、その歪みが、最初の話に戻ってくるんです。

誰かと会って楽しい時間を過ごしたはずなのに、家に帰って一人になった瞬間、
「あの時、私、変なこと言わなかったかな」
「気を使わせてしまったかな」
と検証が始まる。

これって、性格が神経質だからじゃないんですよ。 「ここで本当の繋がりを獲得しなきゃ」という、本来そこには載せなくていい重さを、無意識に載せてしまっているから、こうなるんです。 本当に欲しい繋がりは違うところにあるから…
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「これじゃない」という違和感の正体

そして、面白いのが、ご本人もどこかで気づいているんです。 どんなに仲のいい関係ができても、「これじゃない」って思ってしまう瞬間がある。

頭では「すごくいい人に出会えた」「ここなら馴染めるかも」と思っているのに、
心の奥で「いや、違う」という声がする。

これね、わがままなわけじゃないんですよ。
むしろ逆で、すごく正直な反応なんです。

心の奥が、ちゃんと知っているから。「あなたが本当に満たしたいのは、ここじゃないでしょう」って。 「友達のところで完成させようとしても、それは無理だよ」って。
「これじゃない」という違和感は、自分を責める材料じゃなくて、心からのお知らせなんじゃないかな、と思うんです。本当はどこを見ればいいか、自分はもうわかっている。ただ、見るのが怖くて、まだ動けないだけで。
そして本人は、それを「私はどこに行っても繋がれない人間なんだ」っていう、自分の欠陥のように受け取ってしまう。 本当は、ボタンの掛け違いで、最初から探す場所が違っただけなのに。
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じゃあ、犬や猫を飼えばいいのか?

そういう話をしている時に「じゃあ、犬や猫を飼ったらどうか? って話しも上がるんです」と教えてくれました。 私も犬や猫を飼った経験もあるので「しっぽを振って懐いてくれて、体温があって、絶対に裏切らない存在ですよ」と賛成します。 すると、結構な割合で、首を振られるんです。

「怖くて飼えない」と。
「一生面倒見なきゃいけないと思うと、関わる覚悟が持てない」と。

これね、表面だけ聞くと「責任を負うのが嫌な人なのかな」と思うかもしれないんだけど、私はそうじゃないと思って聞いているんです。 だって、しっぽを振って懐いてくる存在って、すごく満たしてくれるじゃないですか。 寂しさをふわっと包んでくれて、毎日「ただいま」「おかえり」って言える相手がいて、無条件に愛してくれる。

それを家の中に置いてしまったら…
その方の中で、本当に向き合わなきゃいけないことから、目を逸らすことになってしまう。

ご家族とのこと。
パートナーとのこと。
自分が本当に欲しい繋がりのこと。

自分の中にずっとある、もっと根っこの寂しさ。 それらに目を向けないまま、犬や猫の温かさで「もう、これでいい」って自分を納得させてしまう… それが怖い、っていうことだったんじゃないかと思うんです。

ご本人は意識してそう言ったわけじゃないけれど、心の奥は、ちゃんと知っている。
「これ以上の温度を入れたら、私は本当の問題から逃げてしまう」って。
だから、犬や猫は飼えない。

そこで、ちょうど良い温度感を置いてみる

そういう話の流れで、ふっと出てきた言葉があったんです。 「でも、亀を飼っているんです。すごく懐くわけじゃ無いけど、顔を見たら寄ってくる。可愛いから、家族で可愛がってるんです。」って。 箱庭の中に、もうひとつ、小さな存在を置いてみます。
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すると、面白いことが起きるんです。

パートナーも子どもも、ふとした時に、亀の方を向く。
「亀、今日餌食べた?」
「動いてるな」って、たまに話題にしてくれる。
その瞬間だけ、女性のいる方向に、家族の視線が戻ってくる。

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一瞬だけ、同じものを見る時間ができる。
これが、"つながった感じ"になるんです。

でも、それは長くは続かないんですよね。
亀の話題はそんなに長くは続かなくて、家族はまたすぐ、それぞれの窓の外を見る。

女性は、また背中を見ることになる。
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亀自身も、こちらに寄ってくることはあるんです。
のっそり、のっそりと、足元まで歩いてくる。

でも、しっぽを振って甘えてくるわけじゃない。
膝の上に乗ってきて温めてくれるわけじゃない。
女性が欲しい「寄ってき方」ではない。


「程よい距離、程よい関係」その象徴のような存在なんです。
これは、すごい知恵なんです
箱庭を組み立て終わって、上から眺めてみると、その方が今いる場所が、はっきり見えてきます。

家族はそれぞれ別の窓を向いている。
女性は真ん中で、その背中を見ている。足元には、亀が一匹。

寂しい。 だけど、犬や猫を入れたら、その寂しさが埋まりすぎてしまって、ご家族と向き合うことを諦めてしまう。 「程よい関係」で、なんとか持ちこたえている。 これって、すごい知恵なんですよ。 本人は意識していないかもしれないけれど、無意識のところで、ちゃんと「自分の人生で、本当に大事なものは何か」を分かっている。

だから、温度を上げすぎない。
だから、外でも深入りしすぎない。

「人と深く繋がれない私」って自分を責めていたものの正体は、実は、自分の人生から逃げないために、自分で選んでいる距離感だったのかもしれない。
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人形を、そっと動かしてみる

箱庭を眺めているうちに、私はひとつ、お伝えしたいことが浮かんできました。 「ご家族に『私の方を見て』と願い続けるんじゃなくて、彼らが見ている景色のほうに、こちらから興味を持ってみるのは、どうでしょう」

簡単な話じゃないんです。
だって本当は、自分の方を向いてほしかったんだから。

それを諦めて、相手の方に向き直るというのは、ちょっと悔しいというか、なんで自分からって思うところもあって。 でも、ずっと部屋の真ん中で背中を見続けるのと、隣に並んで同じ景色を見るのと、どちらが本当に欲しかったものに近いだろうか、と考えてみる。 箱庭の中で、彼女の人形を、そっと動かしてみるんです。

部屋の真ん中から、ご家族の隣へ。
すると、不思議なことに、ご家族の背中が、ほんの少し近く感じられるようになる。

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亀はね、相変わらず、ずっとそこにいてくれるんです。 真ん中で立ち尽くしていた時も、隣に歩み寄った時も、後ろからのんびりついてきている。 亀さんはマイペース。 完全には満たさないけれど、ぎりぎり持ちこたえさせてくれる存在として、亀はちゃんと役目を果たしてくれている。ただ、亀の温度に甘えて、本当の向き合いを後回しにし続けないこと。亀がいてくれるから、ようやく本当の問題と向き合える、っていうふうに、順番を考えること。 「友達と深く繋がりたい」と願っているその根っこには、もっと古い渇きがあるかもしれない。そこに気づくだけでも、外の人間関係への力みは、少し抜けていくんじゃないかな。 箱庭って、何かを分析するためのものというより、「今、自分はこういう場所にいるんだな」と気づくためのものなんだと思うんです。 この構図を見て、「あ、私もこうかもしれない」と感じる方も、きっといらっしゃるんじゃないでしょうか。 言葉にしにくいものは、こうして配置にしてみると、少し優しく見えてくるのかもしれませんね。FullSizeRender
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