私の心の中には、
「感情処理班」がいるんです。
たぶん、誰の心の中にも、本来はいるんじゃないかなと思います。
悲しいことがあったとき。
腹が立ったとき。
不安になったとき。
寂しくなったとき。
そんなふうに、自分の中で感情が揺れたときに、
その感情を見つけて、受け止めて、なだめたり、整理したり、
必要なら思いきり泣かせてあげたり、
燃やし尽くして終わらせたりする役目。
本来の感情処理班は、
自分の心の中で起きた感情を処理する係なんだと思うんです。
ところが、私の中の感情処理班は、いつのまにか少し違う仕事をするようになっていました。
問題が起きるのは、
私の中で感情が起きたときではなく、
外側で何かが起きたときなんです。
たとえば、誰かの不機嫌。
誰かの怒り。
誰かの沈黙。
誰かの重たい空気。
そういうものに触れた瞬間、
私の中の感情処理班がざわざわし始めるんです。
「何かあった」
「早く対処しないと」
「このままではまずい」
そして、私の心の扉を開けて、
本来は内側で働くはずの処理班が、
外へ出ていってしまうんです。
外に出た処理班は忙しいです。
相手の感情を読んで、
原因を探って、
自分が何か悪かったんじゃないかと考えて、
相手をなだめたり、
場を整えたり、
空気を軽くしようとしたり、
時には自分を責めてでも、その場を収めようとしたりする。
とにかく、何とかしようとするんですよね。
でも、よく考えると、それって本来の仕事じゃないんです。
相手の感情は、本当は相手のものなんです。
相手の不機嫌は、相手の中で起きていること。
相手の怒りも、相手の悲しみも、まずは相手の管轄なんですよね。
なのに、私の中の感情処理班が、
それを自分の仕事みたいに引き受けてしまう。
だから、ヘロヘロになるんだと思います。
外で起きた感情の事件現場に出動して、
なんとか片づけて、
なんとか無事に戻ってきたころには、
もう班のみんなはクタクタなんです。
制服はよれよれで、
足取りも重くて、
「もう今日は無理です……」
みたいな顔をして帰ってくる。
そして私は、そんな自分を見てまた思うんです。
なんでこんなに疲れるんだろう。
なんでこんなに相手の機嫌に振り回されるんだろう。
なんで自分の人生なのに、こんなに落ち着かないんだろうって。
でもたぶん、それは
私の心の中の感情処理班が、
ずっと外の感情まで処理しようとしていたからなんですよね。
そして、ここでよく浮かぶ疑問があります。
でも、外でいろんなことが起きていたらどうするの?
目の前で誰かが怒っていたり、落ち込んでいたり、
その感情がこちらに向かってきそうになったらどうするの?
見ていると、
その人が私を巻き添えにしそうになるじゃないですか、と思うことがあります。
放っておいたら大変なことになるんじゃないか。
今ここで何とかしないといけないんじゃないか。
そんな気持ちが湧いてきて、
また私の感情処理班が扉を開けて、外へ飛び出していきそうになります。
そうなんですよ。
だけど、そこはその人の問題なんですよね。
解決するのは、本当はその人なんです。
怒りも、悲しみも、不機嫌も、
本来はその人の中で起きている感情です。
だから、私が先に処理してしまうことが、
ほんとうにその人のためになるとは限らないんですよね。
もし私が先回りして処理してしまったら、
相手はどう覚えていくでしょう。
「ああ、私の出した感情は、この人が処理してくれるんだ」
そんなふうに学んでしまうかもしれません。
そしてそれが繰り返されると、
いつのまにかそれが癖みたいになって、
ひとつのパターン、ルーティーンになってしまう。
誰かが感情を出す
↓
私が処理する
↓
また同じことが起きる
そんな流れができてしまうんですよね。
だからこそ、
全部を引き受けることが優しさとは限らないんだと思います。
相手の感情は相手のもの。
その人が自分で感じて、
自分で整理して、
自分で越えていくもの。
私にできるのは、
その人の感情を奪うことではなくて、
巻き込まれないでいることなのかもしれません。
そして同時に、
私の感情処理班が本来の場所に戻って、
私の心を整えること。
外の事件を全部片づける必要はない。
私の班は、
私の心を守るためにいるんですから。
本当は、班がやるべきことはもっとシンプルなんです。
外に飛び出していって、
誰かの不機嫌を片づけることじゃない。
そうじゃなくて、
「今、私は怖かったんだな」
「今、私は責められた気がしたんだな」
「今、私は不安になったんだな」
「今、私は嫌われた気がして苦しかったんだな」
そうやって、
私の中に起きた感情を処理することなんですよね。
外を変えることはできなくても、
自分の中に何が起きたかを見ることはできる。
相手の機嫌を引き受けなくても、
それに揺れた自分を落ち着かせてあげることはできる。
感情処理班は、
外の世界のトラブル処理係ではなくて、
本当は私の心を守るための班だったんだと思います。
だから今は、少しずつその班を、外ではなく内側に戻してあげたいんです。
誰かが不機嫌でも、
すぐに出動しなくていい。
誰かが怒っていても、
すぐに片づけに行かなくていい。
まず見るのは、外じゃなくて私の中。
私は今、何を感じたんだろう。
何が怖かったんだろう。
どうしてそんなに慌てたんだろう。
そこに戻ってこられたとき、
感情処理班はやっと本来の仕事を始められるんじゃないかなと思うんです。
もし、いつも誰かの感情に振り回されてしんどい人がいるなら、
その人の心の中にも、もしかしたら
働きすぎてクタクタになった感情処理班がいるのかもしれません。
外の事件ばかり担当して、
自分の心の中に戻る暇もなく、
ずっと出動し続けている班が。
だったらまずは、
その班に言ってあげたいんです。
「もう外ばかり見なくていいよ」
「あなたの仕事は、私の心を守ることだよ」って。
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