「私でごめんなさい」
と感じてしまう人へ
〜フランクルの存在罪悪感〜
みなさんは、こんな感覚を持ったことはありませんか…
「私なんかがここにいていいのかな」
誰かにそう言われたわけでもないのに、
ふとそんな気持ちがよぎる。
人に迷惑をかけたわけでもないのに、
なぜか心の奥に
「私でごめんなさい」
という感覚がある。
実は心理学には、この感覚を説明する言葉があります。
それは 「存在罪悪感」 というものです。
フランクルが語った「存在罪悪感」
この概念を語ったのは、精神科医のヴィクトール・フランクルです。
フランクルは、人間の罪悪感にはいくつか種類があると言いました。
たとえば、
誰かを傷つけてしまった。
嘘をついてしまった。
約束を守れなかった。
こういうときに感じる罪悪感は、いわば 行為の罪悪感 です。
何かをしてしまったから申し訳ないと思う。
これは多くの人が理解できる感覚ですよね。
でもフランクルは、それとは別の罪悪感があると言いました。
存在罪悪感
これは、何かをしたから申し訳ないのではありません。
ただ 自分が存在していること自体が、どこか申し訳ない。
そんな感覚です。
「私でごめんなさい」という感覚
実は私自身、心理学を学ぶまでは、この感覚の正体がよくわかりませんでした。
ただ、心の奥にぼんやりと残っているものがあったんです。
「私でごめんなさい」
という感じです。
子どもの頃、そんな言葉をはっきり考えていたわけではありません。
でも心理学を学び、カウンセラーとして人の心に触れていく中で、あるときふっと気づいたんです。
「ああ、私は子どもの頃、
どこかでこう思っていたのかもしれない」
と。
私でごめんなさい。
私は何の役にも立たない。
そんな感覚が、ずっと奥のほうにあったのかもしれない、と。
人は「存在を証明しよう」とする
もし心の奥に存在罪悪感があると、人は無意識にこんな生き方をしやすくなります。
役に立とうとする。
正しい人になろうとする。
期待に応えようとする。
人を助けようとする。
つまり 自分の存在を証明する生き方 です。
「ここにいていい理由」を、必死に作ろうとしてしまうんですね。
でもフランクルは、こう言っています
存在罪悪感は 悪いものではない と。
なぜならこの感覚は、
「もっとよく生きたい」
という、人間の深い願いから生まれているからです。
ただし、それが 自分を罰する方向 に向いてしまうと、人生がとても苦しくなってしまう。
人は、役に立たなくても存在していい
心理学を学んでいると、こんな言葉に出会います。
「人は、役に立つから価値があるのではない」
存在していること自体に価値がある。
言葉にすると、とてもきれいな言葉です。
でも、もし心の奥に 「私でごめんなさい」 という感覚があるとしたら、この言葉は、すぐには信じられないかもしれません。
(私はずっと疑いの中でもがいていました)
それでも…
少しずつでいいのかもしれません。
役に立たなくてもいい。
うまくできなくてもいい。
誰かの期待に応えられなくてもいい。
それでも ここにいていい。
そんな感覚を、少しずつ体で覚えていくこと。
もしかするとそれが、フランクルが語った 「意味のある人生」 につながっていくのかもしれません。
心の奥にいる「小さな子」
心理学を学んでから、私はもう一つ気づいたことがあります。
心の奥に、とても小さな子がいる感じがするんです。
それは、たぶん 三歳くらいの子。
「私でごめんなさい」
「私は何の役にも立たない」
「もっとわかってほしかった」
そんな声を出しながらも、心を開くことをどこか怖がっている子です。
きっと、これまで何度も
「わかってもらえそう」
と思って近づいては、また離れていく経験をしてきたのかもしれません。
だからその子は、ずっと心の奥に静かに座っている。
心理学を学びながら、私はときどき思うんです。
もしかすると、「存在罪悪感」 という言葉は、あの小さな子の感覚を説明する言葉だったのかもしれない、と。
そしてもし、同じような感覚を持っている人がいるとしたら、その人の心の中にも、もしかすると 小さな誰か がいるのかもしれません。
その子に、いきなり「大丈夫だよ」と言えなくてもいい。
ただ、その子がそこにいることに気づいてあげること。
それだけでも、人生は少しずつ変わっていくのかもしれません。
「私でごめんなさい」
そんな言葉が心のどこかにあるとしたら、
それは、責めるために見つけるものではなく、
やっと気づいてあげられる感覚なのかもしれません。

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