知っている人は知っているけれど、知らない人にとっては、まったく聞き慣れない言葉かもしれません。

エディプス・コンプレックス
エレクトラ・コンプレックス

心理学の教科書に載っているような用語ではありますが、日常会話で使われることは、ほとんどありませんよね。

けれど、この概念を知ったとき、多くの人が口にするのはこうです。

「えっ、そういうことだったの⁉」


私たちが無意識のうちにくり返している恋愛のパターン、異性との関係、そして親との関係。

それらの根っこに、この三角関係の物語が隠れていることがあるのです。


人生の始まりにある「三角関係」

フロイトが提唱したエディプス・コンプレックスは、幼い男の子が「母親を独占したい」「父親はライバルだ」と感じる心の動きを説明するものです。

これに対して、ユングはエレクトラ・コンプレックスという言葉で、女の子が父親に愛情を向け、母親に対して嫉妬を抱く心理を表しました。

つまり、どちらも異性の親を愛し、同性の親を競争相手とみなすという三角関係に由来しています。

もちろん、実際の親子関係がそこまで劇的なものとは限りません。

けれど、心理的なレベルでは、私たちの自己形成や恋愛傾向、人間関係のパターンに、これらの構造が影を落としていることがあるのです。


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勝者と敗者──心の中で繰り返される「戦い」


こうした三角関係の中で、子どもが「勝者」となるか「敗者」となるかによって、その後の人生にどんな影響があると言われています。


異性の親の愛情を独占できたような感覚を持ち、自信や支配欲が強くなる傾向にある人をエディプスの勝者と呼びます。

一方で、同性の親に負けたと感じ、自信を失い、恋愛や対人関係に臆病になるパターンを持つ人は、エディプスの敗者と呼ばれます。


そして、知っておきたいのは…この「勝ち負け」の感覚は、そのまま恋愛や職場の人間関係にも投影されることがあるのです。


こんなパターンを持っている方はいらっしゃいませんか?

「なぜかいつも同性に競争心を抱いてしまう」
「自分には異性の愛を受け取る価値がないように感じる」

…そうした感情が、過去の未消化の三角関係に起因していることもあります。

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子どもの頃、親子の中で自然に生まれる三角関係
たとえば、父・母・自分の3人の関係の中で、

「お母さんを独占したい」という思いを、父親に邪魔されたように感じた

「お父さんに愛されたい」という願いを、母親の存在に阻まれたように思った

そんなふうに、親の愛をめぐる“感情の競争を経験することがあります。

本来であれば、そうした思いは成長の中で整理されていきます。

けれども、親の態度が一貫しなかったり、愛情がうまく伝わってこなかったりすると、
その三角関係の中に「勝てなかった自分」「負けた気がする自分」が、心に取り残されてしまうのです。

これを「未消化の三角関係」と言います。

そしてこれは、無意識のうちにこうした形であらわれることがあります。

異性の上司に認められたいのに、なぜか同性の同僚に阻まれてしまう。

好きな人ができると、「どうせ私なんか…」と身を引いてしまう。

自信があるふうに振る舞うけれど、本当は人間関係が不安でたまらない。

そんなとき、心の奥では「あのときの感情の続き」を演じているのかもしれません。

必要なのは、“勝つ”ことでも“負けない”ことでもありません。

そのとき言えなかった気持ちに気づき、あの場では届かなかった愛情を、自分自身で抱きしめていくこと。

それが、「もう終わったはずの三角関係」に区切りをつけ、今ここで本当の人間関係を築いていくための第一歩になります。

そのために学んでいきましょう。

親殺しというテーマ~神話の中にある心理の構造~

フロイトやユングが心理学の理論を築くときに引用したギリシャ神話には、印象的な親子の物語が出てきます。


たとえば、エディプス。

自分の父を殺し、母と結ばれるという、とても衝撃的な運命を背負った人物です。


あるいは、エレクトラ。

父を失った悲しみと怒りのなかで、母に激しい憎しみを抱き、「母を殺したい」とさえ願った少女です。


こう聞くと、どこか現実離れした残酷な話に思えるかもしれません。

けれど、心理学の世界では、これらの物語を「心の成長の比喩」として捉えるのです。


たとえば

エディプスの物語は、「親を超えていくこと」。

エレクトラの物語は、「親への感情を整理し、乗り越えていくこと」。


つまりこれは、“精神的な親離れ”を象徴していると考えられています。


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私たちは皆、気づかないうちに

「親の期待」「親のものさし」「親のまなざし」
そんな見えないフィルターを心の中に抱えています。


知らないうちに、親に褒められるように、親に反対されないように、

“誰かの娘”や“誰かの息子”としての生き方を、ずっと演じ続けてしまうこともあります。


でも、それでは自分の人生を生きているとは言えないのかもしれません。


だからこそ必要なのは、

「私は、もうあの人の人生をなぞらなくていい」

「私は、私の足で生きていける」


そう感じられるようになること。


それは、親を否定することではありません。

むしろ、“心の中でいったん親を手放す”ことで、ようやく本当の意味で「親」と向き合えるようになることもあるのです。


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苦しみの中にこそ、至福の入り口がある

神話の世界に、「幸せだけで終わる物語」は、ほとんどありません。

英雄も姫君も、試練をくぐり、失い、迷いながら、ようやく何かを手にしていきます。

実はそれは、私たちの心の物語とも、どこか似ているのかもしれません。

「苦しいことがあるのは、成長のため」
そう言い切ってしまうのは、どこか乱暴な気もします。

でも、
つらい経験の中でこそ、自分の中にある無意識の癖にふと気づくことがあります。

誰かの期待をなぞっていた自分。
愛されるために我慢していた気持ち。
「もう、やめよう」と思える瞬間。

そして少しずつ、
“あの人”の視線を越えて、
“あのとき”の傷を越えて

自分の人生に、ようやく帰ってこられるようになるのかもしれません。


それはきっと、もっと自由で、もっとあたたかくて、
「私はここにいていい」と感じられるような人生なのでしょう。

何か大きな目標じゃなくても、朝、目が覚めたときに「よし!」と思えること。
ふと笑った自分に、「良い感じ」と言えること。

その小さな実感の積み重ねが、
私たちを、自分の人生の主役へと戻してくれる気がするのです。

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無意識の三角関係が、私たちの現在の悩みに形を変えて現れている。

こんなことがあるなんて、昔の私なら想像もつかなかったかもしれません。

けれど、それを知った今だからこそ、自分の心のパターンを見つめ、
もう一度、自分の人生を自分のものとして選びなおすことができるのです。

これは2022年3月18日に開催された
心理学入門講座「エディプス・エレクトラ・コンプレックス~人生の始まりは三角関係~」@オンライン
でお話した内容から抜粋したものをYouTubeにupされたものの要約です。

ぜひ、YouTubeもご覧くださいね。


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