昨日からの続きです。
生きていくというビジョンが見えず
自分のことしか考えられず
もう、どうして良いかわからない心情で
見よう見まねで死に場所を探すために
ふらふらと富士のふもとまで電車で向かった私です。
今から考えれば
本当に死にたかったのかどうかも不確かで
そういうまねごとをしたかったのかも知れないと思いながらも
そういうことをするしか
もう
方法はないような気がしていたのは確かでした。
最小限の荷物でうろうろしていた私を
川口湖畔で見つけてくださったTさんという方がいらっしゃいました。
当時で70才くらいの方で
アマチュアカメラマンさんでした。
私もカメラに興味があった時期があって、
その事がきっかけでファインダーをのぞかせてもらったりして
優しい時間を過ごしていました。
その時の私は
一時的に声が出なくなっていたので
会話らしい会話が出来ない状態ではありましたが
次の撮影場所の富士山をバックに
パラグライダー風景が撮れるというところまで連れていってもらう事になりました。
そこに向かう時に
私の本来の目的地であるはずの富士樹海を通りすぎました。
「ここで降ろしてください」とは言わず
その壮大な風景の場所まで
大きな大きな富士山を前に泣き出した私に
その事には何も触れず
富士山の写真の素晴らしさをずっと、楽しそうにお話し続けてくださっていました。
広大な草原に優雅に飛ぶパラグライダー
それを見ながら少しずつ
生きるという事に意識が向かうのを感じた私は、
翌日家に帰る事を決めて
そのようにTさんに伝えました。
もちろん、私がここに来た理由などは話していないのです。
いつまでここに滞在するかとか、何の目的でここにいるのかとか全く聞かず
「時間があるのなら撮影場所についてきますか?」と、おっしゃったのです。
なので
「明日、帰る事にします」と、伝えると
「じゃあ、このあたりのペンションを探しましょう。
明日の朝迎えに来てあげますよ。
朝霧高原へ行ってみませんか?
せっかく来られたのですから」
その時の私は
それがどれくらい優しくて、
どれくらい稀有な事なのかという実感もなく
言ってもらえた通りに
翌朝迎えに来ていただいて、
朝霧高原で写真撮影しているTさんの後ろ姿を
買っていただいたソフトクリームを味わいながら
穏やかな時間を過ごさせてもらいました。
昼過ぎ
富士吉田駅まで送っていただいて、
お互いの連絡先を交換して
その頃はまだインターネットの普及していなかったので
年賀状を出しますという約束をしました。
年賀状を出すというのは、
ちゃんと生きています、という意味だったのかも知れません。
そんなTさんとの最後の別れのとき
握手をして、出ない声を振り絞ってお礼を申しあげて
車を降りようとしていたとき
「人生は色々ありますからね
。生きていたら、必ず良いことはあります。お元気でね。
楽しい時間をありがとう。」
と、おっしゃったのです。
その言葉が心に届いたのは
新幹線の席について
放心状態で富士山を眺めていた時に
突然やって来ました。
長いトンネルの間じゅうずっと嗚咽していました。
あれは
どういう経験でだったのでしょう。
私は本当に富士に行ったのでしょうか?
私は本当にTさんに会ったのでしょうか?
アルバムにはあのときの写真が貼ってあります。
でも
あまりにも不思議な体験過ぎて
リアリティーが無いのです。
そういう体験を通じてでも、私が生きることを持って、
人に生きることを伝えにやって来たという事の証明なのかなぁ?
と思ったりしています。
続きます・・・
↓Tさんから届いた年賀状です。
20年も前ですからね、ボロボロになってしまいました。
飛び立つ水鳥の写真でした。
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